田中茂樹著 ダイヤモンド社 から引用
≪私の子育てを支えてくれたことば≫
私には、子育てをしながら不安になるといつも思い出す話があります。
「そういう人もいるんだ」と知っておくだけで私は少し気分が楽になったので、読者のお父さんお母さんの中にも、同じように楽になる人がいればいいなと思って紹介します。
30年以上前のことです。
Eさんという男性がいました。タクシーの運転手さんで、証券会社に勤めていたけど自由がほしくてやめたのだと聞きました。
当時、Eさんには男の子が生まれたばかりでした。
「いや、田中君、大変は大変なんやけどな。でもおもろいで。僕ら夫婦はずっと犬飼ってたやろ。犬もかわいかったけど、今から思たら犬は物足りんわ。赤ん坊はすごいよ。笑顔が最高。もうあれ見たらメロメロやわ。腹ばいでおいとくやろ、ちっちゃいちっちゃい手で目の前のもん触って口に入れて。自分で届かんかったら『あーあー!』ってこっち見て呼びよるんよ。すごいわ、あの人使いのうまさ」
「最近はいはいしだしたんよ。もう目が離せん。僕、たばこやめたんよ。タバコやライターのほうにすぐはいはいしていくねん。あぶないあぶない。狙いをつけたらタッタッタっと一直線。危ないもの好きやな、子どもは。お目当てのものつかむやろ、そしたらねぶるねぶる。それでこっち見て、にたーってすんねん。自慢やろな。犬よりも気持ちが通う気がするわ。」
「田中君!うちの子、ついに立ち上がったよ!あーあーいうてるから見たら、こたつのはしもって、立ってんねん。足に力がびんびん入ってて、ぶるぶるなってるかんじやねんけど、立ってたわ。嫁さんやなくて僕が最初に目撃したよ。もう犬を超えたわ、人類は偉大やわ!」
・・・
Eさんのおもしろい語り口とピュアな表現、底抜けの楽観性。
最初に出会った育児の先輩がEさん夫妻だったことは振り返ればすごくラッキーだったと思います。
赤ちゃんを犬と比べるのは不謹慎かもしれません。
でもそういう考えで楽しんで大事に子育てをしていたEさんの言葉は、その後、自分が父親になって育児をしだしたとき、いろいろな場面でよみがえってきました。
「こうしなければ」「こう育てなければ」などと不安になるたびに
「田中君、なに険しい顔してるんや。喋る犬やぞ。楽しまな!」
というEさんの声が聞こえてきてラクになれたのです。
Eさんのメッセージの本質は「子どもの暮らすのは楽しい」ということだと思います。
「やらなけきゃいけない仕事」ではなくて「それ自体が最高の体験であり、贅沢なんだ」ということを忘れたらあかんよ、という。
★zekkoutyou
このEさんのエピソード、とても素敵です。
こうして、楽しんで育児をしている先輩の姿を見ているってとても大きな力になる気がします。
>Eさんのメッセージの本質は「子どもの暮らすのは楽しい」ということだと思います。
「やらなけきゃいけない仕事」ではなくて「それ自体が最高の体験であり、贅沢なんだ」
この部分は私達教師も、「忘れたらあかんよ」・・・と思いました。