渡辺道治著 東洋出版社 からの引用
心の体の連動性についての語り
利他の行いが運命を変える
コストにはまるで見合わない利他の行いにどんな価値があるのかを次の語りで伝えています。
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名前は松野三枝子さん。
松野さんは、10年ほど前、ある病気を宣告されました。
病名は、スキルス性胃癌。
癌の中でも進行が早く、また発見しにくいことが特徴の病気です。
松野さんは、体中に次々と癌が転移したために、食道、胃、腎臓、脾臓、胆のうなどを摘出しました。
それでも癌の侵攻は止まらず、7年前にはついに肺にも転移してしまいました。
医師からは「もう余命はほとんどない」と告げられた。
その時、東日本大震災が起きました。
松野さんは入院していた病院で入浴中だったそうです。
津波は病院をも襲いました。
松野さんは、あと1秒というところで助けられ、九死に一生を得ました。
しかに、入院できる病院はなくなった。
家に帰るしか道は残されていない。
この時に、松野さんは、はっきりと自分の「意識」が変わったのだと言います。
近くには、食べるものや住むところがなくて困っている人達が大勢いる。
今、私にできることをしよう。
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もともと料理人だった松野さんは、避難所で炊き出しをすることにしました。
汗水たらして料理をつくり、毎日毎日大勢の人に振る舞いました。
ただひたすら人のために働き、動いたのです。
そうして1か月が過ぎた頃。
ようやく入院できる病院がみつかりました。
久しぶりに検査を受けた松野さん。
そこで信じられないことが判明しました。
体中にあった転移癌が、全て消えていたのである。
ひとつ残らず、です。
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松野さんは言いました。
「どうして元気になったかは明確には言えないけど、震災で意識が変わったのは確かです。」
人のために、できることをしよう。
そのように意識が変わったことが、松野さんの癌を消したのでした。
これはサイゼリア創業者の正垣氏の話とも重なる話です。
人のために動こうとするとき、人間の体は信じられない力を発揮する。
それは、自分のために動こうとするときの比ではない。
自分の想像の何倍もの力が、人のために動く瞬間には湧き出てくるのです。
それは、命までも救うほどのエネルギーであることを、松野さんが教えてくれているように思いました。
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小学校の高学年となれば、委員会やクラブ活動等で下級生を引っ張ることも多くなり、自分のために使える時間はどんどん減っていきます。
「コスパ」の価値観に強く影響されていると、そのことを「損」とすら思ってしまう可能性もあります。
でも、世のため、人のために動くその行いは、自分自身にとっても素晴らしいことがあるとわかると、利他の行いに対する捉えが変わっていきます。
★zekkoutyou
たくさんの「語り」の中でも、これは、とてもインパクトがありました。
正垣氏の話もそうですが、「天への貯金」にもつながるように思えます。