西川純著 学陽書房 からの引用
「一人も見捨てない」は自分にとってお得
あるクラスで『学び合い』の後に、「誰に教えてもらったのか?」と質問したところ、そのクラスで成績トップの子が成績最下位の子に教えてもらったと回答していた。
ビックリして録音してあった2人の会話を聞きなおした。
成績下位の子はクラスの男女関係を、その日習ったイオンの結合の強さで面白おかしく話し続けていた。それを成績トップの子が聞いていた。
おそらく、成績トップの子には男女関係に置き換えることが、イオンの結合の強さを理解するのによい例だと思ったのだろう。
学びが成立するか否かを決定するのは、教え手ではなく、学び手なのだ。
リンゴはニュートンに教えようと思って木から落ちたのではない。
リンゴは何も考えていない。
ところがニュートンはそこから万有引力の法則を学びとったのだ。
我々教師は「教える」ということ「教科書に書いていることを伝える」と言う風に狭くとらえがち。
しかし、子ども達は自分が分かったという思うような様々なことを「教えてもらった」と考える。
『学び合い』をすると教え教えられる関係が固定化するのではと危惧する方もいる。
しかし、『学び合い』での会話をじっくり聞くと、教え手と学び手がクルクルと立場を変えている。
先の例のように、成績最下位の子がトップの子に教えることもまれではない。
そのメリットの重大さを一番深く理解し、『学び合い』を最も強く支持するのは成績上位層の子ども達なのです。
だから『学び合い』は成立し続けるのです。