「子どもを はぐくむ 教師の話し言葉」

今回の参考文献は「子どもをはぐくむ 教師の話し言葉」 大平義正 著 日本教育新聞社 です。

 

 

≪教師の言動は子どもの言動≫

 

 ある研究授業の場面で、子どもの話し合いが活発な学級に出会いました。

 学級会の時間でした。子どもの発言は途切れることなく続くのです。子どもの発言内容は次々に展開するのです。

 子どもたちに発言を聞いていると

「〇〇さんの発言の中で、・・・のところへ付け加えます。」

「〇〇くんの意見に、・・・の部分だけ反対です。」

「〇〇君の言ったことに賛成します。理由を詳しく言います」

などのように、必ず自分の前に発言した子どもの内容を受けているのです。これは、発言者の内容をはっきり聞き取っているからできることです。

 子どもたちの聞き方が見事なので、学級会が終わった後で、担任に、

「このクラスの子どもたちは、他の子の意見をよく聞いていると思いましたが、先生が特に指導したことがあるのですか」とたずねました。担任からは、

「特に指導したことはありません」との返事でした。

 

 それからしばらくたって、私がその学級会で録音したテープを聞いてみると、子どもの発言を受けて担任が、

「〇〇さんの発言は・・・のところをはっきり説明しています。みんなの説明の中身がよくわかって、すばらしい発言でした」

と、子どもの発言をほめたり、

「〇〇さんの説明で、質問したい人がいるので、みんなでなにを知りたいのか、聞いてみましょう」

となかだちして、話し合いを次の展開へと進めているのです。担任の発言自身が聞き取った子どもの発言内容を受けているのです。しかも、発言した子どもの名前をはっきり挙げて、一人ひとりの発言を大切にする姿勢を、担任自身が示していたのです。

 この学級では、担任の聞く態度を、発言する言葉そのものが正に生きた教材となって、子どもに感化していたのです。

 子どもは、教師の言動をよく見ているものです。教師が特に意図して教えなくても、子どもは教師の言動から学び取っているのです。教師がしっかり子どもから話を聞きとっていると、子どもは話の聞き方をその姿から学んでいるのです。

・・・

 この学級では、担任自身が話をよく聞く態度を示し、話しての意見を受容していたことが子どもに無言の教えとなっていたのです。お互いに受容する気持ちをもったことで、子ども同士の望ましい人間関係をつくってきたのだと考えらえます。 

☆zekkoutyou

冒頭から、とても素敵な話です!

意図して教えなくても、その姿から学んでいるのです!

そして、授業の中で培った「お互いに受容する気持ち」が望ましい人間関係を形成しているのです。

 

逆に言えばとても怖い話とも言えます。

意図していなくても、悪い姿から感化してしまうかもしれないのです。

 

私たち教師は、(または、大人は、)心して子どもの前に立たなくてはいけません。

意図していなくても、にじみ出てしまうのです。

よい影響がにじみ出る大人になるよう努めなくてはなりませんね。