「心。」④

今回も 稲盛和夫著 サンマーク出版 からです。

 

そもそも「利他」という言葉の意味は実にシンプルです。

「他を利する」・・・すなわち「自分のため」は後回しにして「他人のため」を優先する。

隣人のために何ができるかを考え、自分がなしうる限りの優しい行為をしてあげる。

たったそれだけのことで、けっして大仰なことではないのです。

家族を持つ者であれば、まず家族を幸せにするために何かをする。

仕事をしていれば、職場仲間や取引先の人たちのために、できるかぎりのことをしていく。

また、自分が住んでいる町や地域が潤うためにできることをやってみる。

どんなささやかなことであっても利他の行為であり、そこで芽生えた利他心がさらに大きく花開くことによって、人間にとってもっとも尊く、美しい行為へと広がっていくのです。

私が自分の人生の中で最初にした「利他の行為」とは何だったかといえば、まだ小学生のこと、ガキ大将として子分を何人も引き連れて遊びまわっていたときのことが思い出されます。

学校から帰るとランドセルを放り出して遊びまわるわんぱくな子どもたちのために、母はいつもおやつを用意してくれていました。

サツマイモを鍋いっぱいにふかしておいてくれていたのです。

当時は大変なごちそうでした。

おいしそうに湯気をたてているさつまいもを見ると、つい手を出したくなる。

そんな気持ちをぐっと抑えて、まず仲間たちに配ってあげ、あまったものを自分の分にする。

今思えば、それがガキ大将だった私の精一杯の「思いやり」でした。

他人を優先し、自分を後回しにするという、素朴で単純な人としての営み。

そんなささやかな行為が、私にとっても利他心の芽生えだったのです。

 

☆zekkoutyou

  「利他」と聞くと、やはり「大仰なこと」と考えてしまいます。

でも、最後にサツマイモをとることだって「利他」と知っていれば、自分にも何かできそうに思えます。

 でも、小学生のガキ大将が自分の分を後回しにできるって、やっぱり小さい時から「リーダー」だったのですね。